辨道法(永平清規)

辨道法

『辨道法』は道元禅師が寬元3年(1245)頃に大佛寺にて撰述されたもの。

『辨道法』の題の左下に「大佛寺」とあり、又、本文中に「大宋諸寺の後架に嚼楊枝の處無し。今大佛寺の後架には之を構ふ。」とあることから大佛寺にて撰述されたことは間違いないものと思う。

『辨道法』には黃昏の坐禪から、夜臥睡眠、後夜坐禪、洗面楊枝法、早晨坐禪、搭袈裟法、僧堂入堂法などが示されている。

この『辨道法』は今は『永平清規』の中に、「典座教訓」「辨道法」「赴粥飯法」「衆寮清規」「對大己五夏闍梨法」「知事清規」として纏めて収められている。

 

辨道法・大佛寺(永平清規)
辨道法・大佛寺(永平清規)

辨道法

  大佛寺

 

佛佛祖祖、道に在りて辨ず、道に非ずしては辨ぜず。

法に有れば生ず。法無ければ生ぜず。

所以に大衆若し坐すれば衆に隨つて坐し、

大衆若し臥せば衆に隨つて臥す。

動靜、大衆に一如し、死生、叢林を離れず。

群を抜けて益無し、衆に違するは未だ儀ならず。

此れは是れ佛祖の皮肉骨髄なり。

亦乃ち自己の脱落身心なり。

然れば則ち空劫已前の修證なり。

現成に拘はること無し、朕兆已前の公案なり。

未だ大悟を待たず。

 

黃昏(おうこん)の坐禪、昏鐘を聞いて袈裟を搭(か)け、雲堂に入り披位に就いて坐禪す。

住持人は椅子に就き、聖僧に向て坐禪し、首座は牀縁に向て坐禪し、

大衆は面壁して坐禪す。

住持人坐禪の時、椅子の後への屏風の外に一榻(とう)を設けて、

或いは志の侍者一人、或いは志の行者一人、住持人に伺候す。

坐禪の時、住持人の入堂は前門の北頬從り入る。

聖僧の前に到り、聖僧に向て問訊燒香し訖て、聖僧に問訊し罷て、

叉手して巡堂すること一帀(いっそう)し、聖僧の前に到り、聖僧に向て問訊し、

椅の前に到り椅に向て問訊し、順に身を轉じ聖僧に向て問訊し訖て、

衣袖を褰(かか)げて椅子に就き、鞋を脱し、足を收めて結跏して坐す。

侍者行者は前門内の南頬に留立して、住持人に從て巡堂せず。

住持人椅子に就き訖て、侍者行者等、本位の處に在て、

聖僧に向て問訊し訖て、濳かに椅の後への榻に著く。

住持人の香合は侍者行者等、之れを帯す。

若し住持人、雲堂に在て眠らば、單位を首座の上肩(じょうけん)に設けて眠る。

起る時は還て椅子に著て坐禪す。

(後夜の坐禅には大衆袈裟を搭けず。住持人の袈裟は椅子に掛て坐禪す。是れ法なり。)

黃昏の坐禪罷めんと欲するには、板(はん)を鳴すべし。

或いは二更三更の中、或いは一點二點三點なり。

住持人の指揮に隨ふ。

既に板鳴り罷て、大衆合掌して袈裟を襞(たた)み被巾に裹(つつ)んで、

函櫃(かんき)の上に安ぜよ。

住持人は袈裟を脱せず。

椅を起て聖僧の前に到て問訊し罷て、前門の北頬從り出つ。

侍者行者等は先づ出でて、僧堂の前に在て、住持人の出るを祗候す。

其の中一人は簾を掲て出るを請ふ。

住持人入堂の時も亦然り。

住持人、若し堂に在て眠らば、行者一兩人、椅の後の榻に留在し、侍者一兩人、聖僧侍者の上肩に在て眠る。

或いは新戒の上板頭(じょうはんとう)に在て眠る。

大衆は暫く畱(とどまり)て坐禪す。

徐徐として被を開き枕を安じ、衆に隨て臥す。

留り坐し衆に違して大衆を顧視することを得ざれ。

猥りに被位を離れ、或いは非處に入ることを得ざれ。

但だ衆に隨て臥す、乃ち正儀なり。

(三千威儀經に曰く、五種の臥法あり。一には當に頭を佛に向くべし。二には臥して佛を視ず。三には雙て兩足を伸べず。四に壁に向ひ及び伏臥せざれ。五には膝を豎てざれ。)

臥するには必ず右脇にして睡れ。

左脇をして睡ることを得ざれ。

臥す時は當に頭を以て佛に向ふべし。

今、頭を以て牀縁(じょうえん)に向ふは、頭、聖僧に向ふなり。

覆臥し睡ることを得ざれ。

兩膝を豎て仰臥することを得ざれ。

身を仰ぐや、脚を交へて睡ることを得ざれ。

兩脚を雙べ伸べて睡ることを得ざれ。

衫裙(さんくん)を卸(おろ)して睡ることを得ざれ。

赤體無慙にして、外道の法の如くなることを得ざれ。

帯を解て睡ることを得ざれ。

夜臥には當に明相を念ずべし。

後夜(ごや)、首座寮前の板鳴るを聞かば、

(此の板、或いは三更の四點五點、或いは四更の一點二點三點、各々住持人の指揮に隨ひて鳴すなり。)

大衆輕身にして起きよ、卒暴なる可からず。

尚畱て睡臥して大衆に無禮なることを得ざれ。

潛かに枕子(ちんす)を把て、函櫃の前に安じ、響かし摺(たたむ)ことを得ること莫れ。

恐くは鄰單を動念せんことを。

且く被位に在て、被を將て身に著け、蒲團を礙て坐禪す。

切に忌む眼を閉ることを、眼を閉れば昏生す。

頻頻に眼を開けば、微風眼に入て困(こん)容易に醒む。

應に無上迅速にして、道業未だ明めざることを念ずべし。

動身し頻呻し怒氣し、上下に扇風し、衆をして動念せしむることを得ざれ。

大凡、衆に於て常に恭敬を生ぜよ。

大衆を輕慢することを得ざれ。

被を將て頭を幪ふことを得ざれ。

因、來るを覺るが如きは帽被を脱落して、輕身にして坐禪せよ。

其の時節を伺て、須く後架に赴て洗面すべし。

(時節を伺ふとは大衆の洗面稍其の隙を得るなり。)

手巾を携へ左臂に掛け、兩端内に在り、或いは外に在り。

抽身して牀を下り、輕身輕歩して、便路を經て後門に赴き、

輕く兩手を以て簾(れん)を掲げて出でよ。

若し上間(じょうかん)に在らば北頬(ほっきょう)從り出でよ。

先づ右の足を出せ。

若し下間(げかん)に在らば南頬(なんきょう)從り出でよ。

先づ左の足を出せ。

鞋を拕(ひ)き、地を蹈(ふみ)て、響を作すことを得ざれ。

照堂、槁亭を經過して後架(ごか)に赴くに、路に在て人に逢ふも相ひ話すべからず。

如(も)し、人に逢はざるも、何ぞ敢て吟詠せん。

手を埀れて袖に成すことを得ざれ。

手を袖に揖(いつ)して行け。

既に水架(すいか)に到らば、且く處有らんを待て。

衆家に搪揬(とうとつ)することを得ざれ。

既に處有ることを得ば、即處に洗面せよ。

洗面の法は、手巾を用ひて頸に掛け、兩端前に埀れ、次に兩手をもて各一端を把て、左右の腋下從り背後に至らしめ、互相(たがいにして)兩端を交へて、又、兩の下從り面前に至らしめ胸に當て結定せよ。

一に絆を繫るが如くす。

全襟と兩袖とをして、兩臂以上、兩肩以下に押し褰(かかげ)しむ。

次に手に楊枝を執り合掌して曰く、

手執楊枝、當願衆生、心得正法、自然清淨。

即ち楊枝を嚼み、誦して曰く、

晨嚼楊枝、當願衆生、得調伏牙、噬諸煩惱。

佛言く、楊枝の頭(はし)を嚼むこと、三分に過ることを得ざれと。

凡そ齒を踈(そろ)へ舌を刮(か)くこと、當に須く如法なるべし。

舌を刮(か)くこと三度に過ることを得ざれ。

舌上より血出ては當に止むべし。

古(いにしへ)に云く、淨口は楊枝を嚼み、口を漱ぎ、舌を刮くと。

若し人相ひ向はば手を以て自の口を掩て、人をして見せしめ嫌心を生ぜしむること莫れ。

洟唾(ていだ)須く屏處に知すべし。

大宋諸寺の後架に嚼楊枝の處無し。

今大佛寺の後架には之を構ふ。

兩手に面桶を把り、竈頭に臨て、桶を安じ、杓を把り湯を汲て、桶に承け、

架上に還り來り、手を桶に輕ふして洗面低細にす。

如法に眼裏鼻孔、耳邊口頭を洗て淨から見(し)めよ。

湯水多く費し、度無くして使ふことを得ざれ。

口を漱がば水を面桶の外に吐け。

曲躬低頭して洗面し、腰を直して水を鄰桶に濺ぐことを得ざれ。

兩手に湯を掬して洗面し、垢膩を留ること忽れ。

次に右手を以て手巾の結(むすび)を解て面を拭へ。

如(も)し公界の拭面有らば乃ち之を用よ。

桶杓喧しく轟かし咳嗽すること聲を作して、清衆を驚動することを得ざれ。

古に曰く、五更の洗面は本と修行の爲めなり。

豈に嘘唾して盆を把り、堂に喧しく衆を喧うせんや。

歸堂の威儀は出堂の法に準ず。

被位に歸り來らば、被を將て體に葢うて如法に坐禪せよ。

或いは被を葢はざるも、人の意に在り。

此の時、未だ袈裟を搭(かけ)ず。

若し直綴を換えば被位を離るること莫れ、位に在て換へよ。

先づ日裏の者を將て、先に身上に葢ひ、濳かに打眠直綴の兩帯を解き、肩袖を脱で背後と膝邊とに落す。

譬へば蒲團を遶らすが如くせよ。

次に日裏の者の兩帯を結て、著定し了り、打眠直綴に收て被位の後に窖在(こうざい)ぜよ。

日裏の者を脱ぎ打眠衣を著るも、須く之に準じて知るべし。

牀上に露白にして衣を換ることを得ざれ。

牀上に立地して被の服に曳き疊むことを得ざれ。

牀上にして頭を抓(か)くことを得ざれ。

牀上、數珠を弄して聲を作し衆に輕することを得ざれ。

牀上にして鄰單と語話することを得ざれ。

牀に在て坐臥參差(しんさ)することを得ざれ。

牀に上り、牀に下るに、牀上に匍匐(ほふく)することを得ざれ。

大に牀席を拂拭して聲有らしむる得ざれ。

五更に首座寮前の板を鳴すこと三下。

住持人と首座との坐堂の以後は大衆、前門從り出入することを得ざれ。

未だ開靜せざる前に單を收め被を摺(たた)むことを得ざれ。

方に開大靜を候(まつ)て、所謂厨前の雲版及び諸堂前の板、一時に倶に撃つ。

時に於て單を摺み被を摺み、枕を收めて帳を上げ、袈裟を搭け相向て坐す。

即ち窻簾及び前門後門の簾をも上ぐ。

聖僧前に裝香點燭す。

被を摺むの法は、因に開大靜を聞て兩手を以て被の兩角を執て把り合せ、縦に折て兩重と作し、次に又縦に折て四重と作し、次に内に向けて横に折て四重と作す。

都て計るに十六重なり。

以て眠單の奥頭に安ず。

次に眠單を被の下に疊み斂(おさ)めて、枕子を被の裏に挿む。

被を安ずるの時は重ね有るの頭(はし)、身に向けて以て之を安ず。

次に合掌し兩手を以て袈裟を裹(つつ)めるの被巾を執て、以て倶に被の上に安ぜよ。

次に合掌して被巾を開き、以て被巾を被の上に葢ふ。

所謂、被巾の兩端を以て、下に向けて摺被の左右を裹(つつ)むなり。

摺被の前後を裹まざれ。

次に袈裟に向て合掌して、兩手を以て袈裟を擧て、以て頂■(寧頁)(ちょうねい)上に安じ合掌して發願し偈に曰く、

大哉解脱服、無相福田衣、被奉如來敎、廣度諸衆生。

然して後、袈裟を著け右に身を轉じ、正面に向けて坐す。

摺被の時、被をして横たへ鄰位の單上に到らしむることを得ざれ。

卒暴にして聲を作すことを得ざれ。

護身護儀、衆に隨ひ衆に恭(うやうやし)うするのみ。

開靜以去は、單を展べ被を葢て眠ることを得ざれ。

粥了には衆寮に歸り、喫茶喫湯す。

或いは被位に復りて打坐す。

早晨坐禪の法は、粥罷、小頃(しばらくありて)、維那坐禪の牌を僧堂前に掛け、

然して後、板を鳴す。

首座大衆、袈裟を搭けて入堂し、被位に就て面壁坐禪す。

首座は面壁せず。

自(その)餘の頭首(ちょうしゅ)は大衆に一如して面壁して坐す。

住持人は椅子に就て坐禪す。

坐禪の衆家、頭を回らして入出の面を看ることを得ざれ。

如(も)し、堂外に出て、及び後架に赴んと欲せば、未だ被位を離れざるの時、

先づ袈裟を脱して被上に安じ、合掌して牀を下る。

牀を下せんと欲する時は、順に身を轉じて牀端に向ふなり。

方に脚を下ろし鞋を著て去る。

出入の次でに坐禪の人の脳後を見ること莫れ。

直に須く低頭して行くべし。

足を先にし身を後にして歩することを得ざれ。

應當(まさ)に身足同じく運ぶべし。

面前一尋(じん)許り地を直觀して行き、歩の量は趺(ふ)に齋し。

緩緩(かんかん)として歩み閑靜なるを妙と爲す。

猶ほ住立するが如く運歩せざるに似たり。

鞋を拕(ひ)て聲を作し、大衆に無禮し大衆を動念せしむることを得ざれ。

行く時は應に揖手を兩袖合裏に斂むべし。

兩袖を左右の脚邊に埀ること莫れ。

牀上に立地して袈裟を襞むことを得ざれ。

口を以て袈裟の縁を啣(ふく)み襞むことを得ざれ。

兩手を以て袈裟を提げて奮ふことを得ざれ。

脚を以て袈裟を蹈み、頷を以て袈裟を把て襞むことを得ざれ。

濕手にして袈裟を執ることを得ざれ。

袈裟を聖僧の龕(がん)及び長連牀(ちょうれんじょう)の板頭に掛在することを得ざれ。

袈裟下縁を敷壓(ふあつ)し坐することを得ざれ。

常に袈裟を顧みて齊整觀つべからしめよ。

袈裟を搭んと欲ば、先づ袈裟に向て合掌して然る後に之を搭けよ。

袈裟を襞て安じ訖て、乃ち擧手合掌する、是れ常の儀なり。

知らざるはあるべからず。

坐禪の時、袈裟を著て被位を離れ堂外に出ることを得ざれ。

庫下の火鈑(かはん)鳴るを聞て、大衆同時に合掌す。

乃ち坐禪罷むなり。

此の時、大衆袈裟を搭けて出堂し、蒲團は被位に留在す。

且く齊罷を待て蒲團を窖(おさ)む。

火鈑鳴て、維那堂司供過の行者をして坐禪の牌を收しめしむ。

(早晨の坐禪には坐禪の牌を掛け、餘時の坐禪には坐禪の牌を掛けず。放參の時には放參の牌を掛け、昏鐘鳴るには放參の牌を收む。坐禪の法は早晨には板を鳴し、黄昏には鐘を響かす。大衆搭袈裟にて雲堂に入り被位に就て面壁坐禪す。後夜と晡時には袈裟を掛けず。但だ坐禪のみ。晡時には衩衣にして入堂し、單位に就き蒲團を出し用て坐禪す。未だ展單せず。或いは半展單の古法も有り。衩衣を脱し疊み、被の上に安じて坐禪す。後夜の坐禪には袈裟を函櫃の上へに安じて、未だ動著すること能はず。)

正に坐禪の時は必ず蒲團を用ふ。

或いは結跏趺坐、謂く結跏趺坐は先づ右の足を以て左の■(月坒・腿)の上に安じ、次に左の足を以て右の■(月坒)の上に安ず。

或いは半跏趺坐するも亦た可なり。

但だ左の足を以て、右の足を壓するのみ。

次に右の手を以て左足の上に安じ、左の掌を右の掌の上へに安ず。

兩手の大栂指面して相拄(ささ)へて、直に須く正身端坐すべし。

謂く、頂■(寧頁・ねい)脊骨相拄て端直なり。

左に側(そばだ)ち、右に傾き、前に躬(くぐま)り、後へに仰ぐことを得ざれ。

耳と肩と對し、鼻と臍(ほぞ)と對せしめんことを要す。

舌は上腭(あぎと)とに掛け、脣齒相著け、目は須く正く開くべし。

張らず微(ほそ)めず、瞼を以て瞳を掩ふこと莫れ。

頂(うなじ)を以て、背に差ふことを莫れ。

鼻息は通ずるに任せ、喘がず、聲せず、長ならず、短ならず、緩ならず、急ならず、身心倶に調へて、擧體數欠すべし。

内外放寬し、左右に揺振(ようしん)すること七八箇。

兀兀(ごつごつ)と坐定して箇の不思量底を思量せよ。

不思量底、如何が思量せん。

非思量、乃ち坐禪の要術なり。

若し坐を起(た)んと欲せば徐徐として起て。

如(も)し牀を下せんと要せば、緩緩として下れ。

高足大歩し急歩馳騁(ちへい)することを得ざれ。

須く手を袖裏に揖して、兩袖を下面に埀ること莫るべし。

點頭を用ひず、祗々脚跟を看、詳緩として行て、卒暴なるべからず。

時と與に低細し、如法に衆に隨ふ、迺(すなは)ち辨道の規矩なり。

放参の法、所謂、放参は晡時の坐禪罷て之を行ふ。

雲堂の大衆、齊罷て蒲團を收めて出堂し、衆寮に歇(いこふ)て看讀牀に就き、稍や時餘を經て將に晡時に至らんとするとき、(世俗の未の時の終りに當る)

雲堂に歸り蒲團を出して坐禪す。

是れ從り以後、明日の齊時に至るまで、蒲團は常に單位に畱む。

放參前に首座、雲堂に入る。

首座入堂の路は雲堂の北簷下(ほくえんか)を經て、前門の南頬從り入る。

或いは首座寮前の板を撃つこと三下し、了て入堂し聖僧前に燒香し罷て位に就て坐す。

或いは聖僧に燒香問訊し、罷て巡堂一帀し、訖て坐に就く。

次に堂司の行者、諸寮に報じて曰く、首座坐堂と。

或いは衆寮前の板を三下し、大衆に報ずるなり。

大衆板を聞て入堂し、袈裟を搭(とう)し、單位に依り相ひ向て坐す。

面壁坐禪の人も此の時、袈裟を搭し、轉身し相ひ向て坐す。

堂司の行者、先づ堂頭に禀(もう)して放參の牌を掛く。

然して後、行者前堂の簾を上げ、次に行者堂に入て聖僧に問訊し罷て、

首座の前に到て、首座に向て合掌問訊し訖て、曲躬叉手して低聲に報じて曰く、和尚放參と。

首座合掌黙然として聴く。

次に行者復た聖僧の前に於て躬身如法に問訊し訖て、正立叉手して放參を唱ふ。

(須く聲を引て唱ふべし。)

次に行者僧堂前に出て、放參鐘打つこと三下す。

(此の時世俗の酉の時の半分に當る。)

大衆、鐘を聞て坐位に在て上下肩に揖す。

揖食(いつじき)の法の如す。

若し住持人、堂に在らば、住持人坐を起て問訊し、聖僧の前に到て問訊し訖て出堂す。

大衆下牀(あじょう)し、上下肩に問訊し、單を展べ、帳を下し罷て、衆寮に歸り上下肩に問訊し、案頭の位に就て相ひ向て坐す。

喫湯は隨意なり。

或いは獻湯の時、寮首座は位に就て坐す。

寮主燒香、然して後、湯を行(ひ)く。

寮主燒香の時、大衆合掌す。

或いは寮主著衩衣にして燒香し、或いは寮主搭袈裟にして燒香す。

或いは住持人の指揮に依り、或いは寺院の舊例に依る。

寮主燒香の法は、先づ當面に到て聖僧に向て問訊し罷て、香爐の前に歩み寄りて、

右手に上香し罷て、叉手して右に身を轉じ、還て當面に到り問訊し訖て叉手し、

上間の兩板頭(りょうはんとう)中間に歩み到り、問訊訖て叉手し、右に身を轉じ正面を經て、下間の兩板頭の中閒に歩み到り、問訊し訖て叉手して右に身を轉じ、

正面に歩み到り、聖僧に向て問訊し了りて叉手して立つ。

然して後、湯を行(ひ)き茶を行く。

茶湯罷て、又燒香問訊す。

行李(あんり)初めの如し。

 

辨道法 終



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